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プチドッグ: 2010年12月アーカイブ

 

本当に食糞はいけないことなの?

本当に食糞はいけないことなの?

 自分のウンチを食べることを食糞症(Coprophagia)と呼びますが、残念ながら食糞症の生理的意義については分っていません。食糞症には自分自身の糞を食べる(Autocoprophagia)場合と草食動物の糞など他の動物の糞を食べる(Intraspecific coprophagia)場合があります。文化の違う犬と人間が共存する以上、食糞は問題行動として取り上げられますが、(健常)健康な動物のウンチを食べることは犬にとって「ノークレーム・ノーリターン」。つまり、医学上大きな問題となることはありません。


 しかし、寄生虫に感染した動物のウンチを摂取した場合は別です。何らかの問題がが出ることは言うまでもありません。

 一般的に仔犬が糞を食べることは自然の現象です。しかし成犬が糞を食べる理由を理解することは非常に難しいです。人間でも強迫神経障害など精神的な病気の症状として食糞することが証明されていますが、犬でも同様の可能性があると言われています。


食糞する原因に関するいくつかの仮説

 子犬の場合は周囲の「環境調査」をする習性が強く、人間が触って感触を確かめるように彼らは口を使って認識しようとする傾向があります。つまり落ちている糞を「テイスティング」して情報収集しているのです。「テイスティング」した対象が、人間の感覚では理解し難い「ウンチ」であるだけで、犬科動物の習性から判断すると食糞は自然な現象です。


 実際、狼は草食動物である牛などの糞を摂取して不足しがちな栄養成分を補完していたのです。本来、母犬は子犬の肛門を舐めることにより排便を促し、また、巣を清潔に保つため、あるいは捕食動物からの攻撃を防ぐため臭いを消すために排泄物を食べます。子犬は母親から教わった行動を学習し食糞するようになりますが、多くは乳離れするころには止まります。
 また食事が悪いから食糞するのではないかという仮説もありますが、理想的な食事を与えている犬でも食糞行為をしたという動物行動学の研究で覆され、現時点でこのセオリーは支持されていません。


 その他よく言われる仮説を列記してみました。
  • ウンチを食べると飼い主が騒ぐのでうれしくて糞を食べるのではないか説
  • 1つの集団で立場の優位な犬の糞を食べることは服従的行為となるから糞を食べる説
  • 1日1?2回の食餌であまりにも空腹のため糞を食べて「自給自足」で補完しているのではないか説
  • ビタミン(K,B)の不足を補うための「リサイクル」説

食糞行為に対する戦略

 基本的には「時間が解決する」という概念を念頭においておく必要がありますが、
補助的にトライしてみる価値のある戦略をいくつかご紹介致します。


 食糞に対する信頼性の高い戦略は、やはり素早く糞を処理し犬が食糞する機会をなくすことです。これは確かに正攻法ですが飼い主が外出して犬が部屋で留守番しているような場合は対応できないという問題があります。また食糞した犬を「現行犯逮捕」して、「鼻を床に押し付ける」という古典的なしつけ方法で教育しても「うんちを食べると遊んでもらえる」という回路が犬の脳内で発生し食糞を助長する可能性があります。一般的に「罪」と「罰」が一致していれば問題ありませんが「ウンチを食べた罰」と犬に理解させることは困難です。ですから例え犯行現場に遭遇しても直ぐ逮捕するより犯行を「無視」し、次回から何も言わず糞を迅速に処理するほうがスマートかもしれません。


 糞の臭いや(性状)状態を変化させるという意味を込めて、高繊維(かぼちゃなど)の高消化性の食事に変更する、あるいは異なるタンパク源のフードに変更すると功を奏することがあります。
 動物病院で猫が緊張すると診察台に肉球の跡がくっきり残る理由も理解できます。(まるでドイツ生まれのアウトドアブランドであるジャックウルフスキンのマークのよう)人ではエクリン汗腺以外に「ワキガ」や「オヤジ臭」などの体臭の要因となるアポクリン腺が存在していますが、猫にはこのアポクリン腺がありません。清潔好きと言われる猫はセルフグルーミングの効果も含め体臭はほとんど気になりません。


 フランスの獣医行動学者の研究(the World Small Animal Veterinary Congress in 1996)で猫が分泌するフェロモンがはじめて確認されましたが、猫の顔や尻尾にはそれぞれに特有のフェロモンを分泌する臭腺(アポクリン腺、エクリン腺、皮脂腺)があり、室内の柱や家族にその部分を「スリスリ」させて、自分の匂いをこすりつけて「マーキング」します。実は肉球にも分泌腺があり爪とぎの際にパットから出る分泌物をこすり付け、自分の臭いをつけることにより安心しているのではないかと考えられています。
食糞行為に対する戦略

食べたくない糞にしてしまう方法

 科学的な裏づけはありませんが、仮に吸収不良が原因で食糞をしている場合、フードに食肉軟化剤や消化酵素を「トッピング」する作戦はタンパク質消化の一助となり役立つかもしれません。有効性は立証されていませんがパパイア(パパイン)、パイナップル(ブロメリン)、キウイフルーツ(アクチニジン)、メロン(ククミシン)、ヨーグルト、カッテージチーズの「トッピング」で糞自体の味や臭いを悪くして食べることを思いとどませる作戦を推奨する獣医師もいます。

食べたくない糞にしてしまう方法 より攻撃的なアプローチとして糞自体に刺激性のあるタバスコ、ビターアップル、マスタード、コショウあるいはトウガラシを「トッピング」することを勧める獣医師もいますが、「トッピング」されていない糞は食べてしまうという問題に発展する可能性が出てきます。テキサスA&M大学の動物行動学者であるDr. Kathalyn Johnsonはホウレンソウにも同様の効果があるといいます。ホウレンソウに豊富に含まれている鉄分が、糞の臭いに影響を与えるのでしょう。
 ペットショップで市販されている食糞防止サプリメントには、野菜の抽出物やチアミンあるいはトウガラシが配合されていますが、原理は同じです。サプリメント自体の味はほとんどありませんが、消化管を通って移動すると、糞が非常に苦くなり犬の嫌いな味にさせる作戦である。

 実は食糞を100%防止する方法が1つだけあります。それは犬に口輪をすることです。例え飼い主さんが留守の時でもこの方法は有効的ですが、「ウンチ」を食べない代わりに「ランチ」も食べられないという問題があります。現時点では犬が食糞する原因とメカニズムが解明されていませんので、食糞するすべての犬に100%の効果が期待できる治療方法は残念ながらありません。


 

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